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篠崎靖男の考えること。


by cnyasuo

指揮者として良く聞かれる質問トップ3

ロス・アンジェルス・フィルのアシスタント・コンダクターを終えて、
ロンドンに在住して早3年。ロンドンでは、アート、文化の中で
刺激的な生活を送っている。
芸術家には、刺激が常に必要だし、これまでの実績は実際の活動には
大事だけれど、いつもクリエイト、挑戦し続ける事が、
芸術家として存在する条件だと思う。

まあ、それはそれとして、今週、ロンドンの日経紙「英国ニュースダイジェスト」
が私のインタビューを載せて下さっている。
http://www.news-digest.co.uk
今回は、良く聞かれる質問トップ3と言うテーマでお話をさせて頂いた。
        
指揮者として良く聞かれる質問トップ3_e0053775_17213459.jpg

芸術監督を務めている、Kymi Sinfoniettaのポスター。
背後に見える、赤い建物は、コンサートホール。
 (more に続く)




MYTOP3
同じ日本人でも仕事も趣味も十人十色。
英国に住む日本人と日本に所縁のある
人々に、さまざまなお題で
トップ3を選んでもらいました。

良く聞かれる質問トップ3 1

1、どうして指揮者になったの?

自分自身でもこれという理由は見つからないのですが、
原点は、バレリーナである姉の影響かなと思います。
バレエの練習のため家にはいつもチャイコフスキーが
流れていて、その側で僕はいつも、音楽に合わせて
手を動かしている子供だったみたいで。大きくなっても
音楽好きは変わらず、どの楽器にも興味がありました。
実際、ピアノやクラリネット、ヴァイオリン、声楽など、
ひと通りは経験しましたよ。でも結局、それぞれに美しい音を
奏でるすべての楽器を調和させ、さらに壮大な一つの音を
生み出すのは、指揮者にしかできない。どうして指揮者に
なったのかと問われれば、「オーケストラという『楽器』を奏でたい」。
今ならそう言えますね。もちろん、この世界ではまだまだ
若手ではありますが、それでもこの仕事が自分の「天職」
だと思っています。

2 指揮をするのは気持ちいい?

ちょっと逆説的かもしれませんが、指揮者には、「自分が音を
出さない喜び」というのがあるんです。
物質的には、何の楽器も演奏しない。でも、すっとタクトを
降ろした瞬間から、自分には出せない音、沸いてこない
アイデアがそれぞれの奏者から次々と出てくる。もちろん本番中は、
言葉で支持や意見を出せません。でも、「無言のディスカッション」で、
自分の可能性を超えるほどの美しい音楽が生まれることがある。
その瞬間の感動は、言葉で言い表すことはできませんね。
そこへさらに、会場からの大きな拍手。僕と100人近い奏者と、
そして、ときには3000人という観客。それぞれに、年齢も
バックグラウンドも生き方もまったく違う人間が一体となって、
一つの感動を呼ぶ。こんな世界は他ではなかなか
味わえないんじゃないかという自負と喜びがあります。

3 指揮者によって音楽は変わるの?

明らかに変わります。とはいえ、何が違うのかといえば、
言葉で説明するのは難しい。強いて言えば、どれだけ強い「意思」を
持っているか、ということでしょうか。音を出せないぶん、極端に
言えば全身全霊をかけてタクトを振り、100人の奏者をリード
しなければならないわけですから。音楽の知識やテクニックはもちろん、
人としての経験や器がものを言うのかもしれません。
よく、「いい音楽には懐がある」と言われるのですが、結局これに尽きると
思います。必ずしも「いい人」である必要はないんです。とくに若い頃は、
少々荒削りだっていい。ただ、確固としたオリジナリティを持っている
指揮者は不思議なオーラを持っていて、どんなオーケストラであっても、
どんな演目であっても、やはりその人の指揮した音楽になるんです。
それはもう、一種のマジックですね。


おまけのお話。

私の指揮棒
みなさん、指揮者の使う指揮棒って、何でできているかご存知ですか?
一般的には、握る部分はコルク、棒の部分の材質は木ですが、
グラス・ファイバーやカーボン製もあります。この中で、細さと軽さ、
持ったときの自然さは、やはり木が一番ですね。ちなみに私が
世界中持ち歩いている指揮棒は、実は、日本製。しかも、東京の月島で、
たった一人の職人さんが桜の木から作っておられます。
欧米の同僚指揮者にもよく欲しがられますね。
日本の職人技術はやはりすごいものなんです。
by cnyasuo | 2007-11-02 17:36 | 音楽